特定健診日記

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JUPITER試験-ロスバスタチン(クレストール)の絶大な抗動脈硬化作用

先々週のNew England Journal of Medicineに発表された論文(全文はこちら)ですが、JUPITER(ジュピター)試験というランダム化比較試験(RCT: randomized controlled trial)の結果はかなり衝撃的でした。アメリカ、カナダ、中南米、ヨーロッパ、南アフリカなどの26ヶ国で1万7802人を対象に行われた大規模臨床試験で、健常者を対象とする1次予防試験です。LDL(いわゆる悪玉)コレステロール130mg/dl未満のコレステロール正常者を対象に、高感度 CRP0.2mg/dl以上の人たち(最近、CRPの高い人たちは動脈硬化のハイリスクグループと考えられるようになってきています)をランダムに2群に分け、ロスバスタチン(クレストール)20mg内服群と偽薬群とで2重盲験(薬を飲む人も投薬する医師もどちらの群であるかを伏せられていること)をしたところ、ロスバスタチンで動脈硬化イベントが44%も少なかった、という結果です。NNT(number needed to treat:治療必要数(ある医学的な介入を行った場合、 一人に効果が現れるまでに何人に介入する必要があるのかを表す数字))も5年ベースで25人という、1次予防(健常者対象)としては驚異的に低い数字が出ました。



これまでスタチン系薬剤は、肝臓のLDL受容体の発現を高め、LDL粒子の血中からの除去を促すことで血中LDLコレステロールを低下させる「高脂血症治療薬」という位置づけが基本だったわけですが、今回のように、LDLコレステロールが高くない人たちに対してもこれだけ有効ということがわかってくると、今後、スタチン系薬剤の位置づけは「抗動脈硬化薬」ということになってきそうです。

ちなみに、スタチン系薬剤は、三共株式会社(現、第一三共株式会社)の研究員だった遠藤章東京農工大特別栄誉教授が発見された、世界に誇るべき素晴らしいお薬であり、医学の歴史に燦然と輝いています。遠藤先生はこのご業績により、今年、ラスカー賞臨床医学賞を受賞され、ノーベル賞の呼び声さえ非常に高いわけですが、なぜか日本国内ではこの数年、「スタチンバッシング」とでも言うべき、非科学的かつ政治的なネガティブキャンペーンのターゲットになっているようです。たとえばつい最近も「コレステロールと中性脂肪で薬は飲むな」などという本が出ているようです。こういう本を書いたり、読んだりしている方々には、ぜひ、MEGA studyJELISという日本人でのエビデンスなどもしっかりとふまえていただきたいものです。


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