特定健診日記

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来年、糖尿病の診断基準に加わるHbA1cはもともと日本発の発見!

特定健診保健指導
来年2月頃に、日本糖尿病学会から糖尿病の新たな診断基準が策定され、1999年以来の大幅改定になるらしいことは以前のエントリーd:id:bonbokorin:20091103:p1でお伝えした通りですが、改定の目玉は「HbA1cの導入」です。


そのHbA1cですが、糖尿病やその予備軍の日常診療の中、あるいは特定健診、さらには国民健康・栄養調査などにおいて既に広く使われていますが、「高血糖に伴ってHbA1cが増加する」というそもそもの原点の歴史的大発見は実は日本発の研究業績であったことは残念ながらあまり知られていませんし、世界の糖尿病学の専門家の間でも正しく認知されているとは言い難い状況です。


下記がその世界初の報告(日本血液学会雑誌 25: 579, 1962)で、昭和37年の日本血液学会での発表抄録です:


糖尿病患者の血液に見出される異常血色素成分について
柴田進、宮地隆興、上田智、武田勇(山口医大臨床病理)


 われわれは種々なる患者の溶血液を寒天電気泳動法によって調べ、異常血色素の有無を検査しているうちに、偶然糖尿病患者の血液が異常血色素様成分を有することを発見した。この成分は寒天電気泳動法によってのみ検出し得るものであって、pH7.0の寒天でHbAおよびHbA2より陰極側で、丁度HbFの位置に泳動する。pH8.6の寒天では、含量の多いときにだけHbAより陽極側に尾を引いたように姿を現わすが、分離が不完全である。このようにHbFと一見区別ができないが、アルカリ抵抗性を有していない点がいちじるしくちがっている。


 寒天電気泳動法で精製し、犬の血色素と一緒にしてhybridizationを行ったところ、α chain anomalyを有することがわかり、またHbAおよびHbFとは異なるfingerprintingを示した。


 この異常血色素様成分は空腹時血糖200mg/dl以上の糖尿病患者に多く検出される。治療により症状が軽快すると認め難くなる。糖尿病の代謝異常が糖質のみならず、蛋白質である血色素にまでおよんでいることを暗示する事実として興味があると思う。


なお、この歴史的事実を含め、日本人研究者の糖尿病学における多大な貢献の数々については、日本内科学会雑誌の創立100周年記念号の「内科100年のあゆみ-糖尿病の歴史」(日本内科学会雑誌 91:1195, 2002)に詳しいです。


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