特定健診日記

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ベイスン錠が境界型耐糖能異常へ適応拡大へ

武田薬品工業の製造・販売しているベイスン錠の適応が、糖尿病から前糖尿病状態の境界型耐糖能異常へと拡大されることになる見通しだそうです。

下記は本日付の薬事日報の記事からの引用です。

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は8月28日、武田薬品が申請した糖尿病治療薬「ベイスン錠」の適応拡大「耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制」を了承した。同薬剤の効能・効果の追加は国内初となる。


 効能・効果は、食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合の、耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制。原体・製剤とも毒薬・劇薬に該当せず。再審査期間は4年。


 国内でプラセボ対照の臨床試験を実施したところ、プラセボに比べて同剤が2型糖尿病の発症を遅らせるデータが得られたという。承認条件として、▽投与中止例の追跡調査を含めた市販後臨床試験の実施▽長期使用に関する試験成績を医療機関に速やかに情報提供すること――を付した。


文脈としては、今年5月にLancet誌に掲載された順天堂大学の河盛先生らの論文(Voglibose for prevention of type 2 diabetes mellitus: a randomised, double-blind trial in Japanese individuals with impaired glucose tolerance. Lancet 373:1607, 2009.)の国内臨床試験データ(VICTORY試験)に基づいて、申請されたものと思われます。その中身は下記のようなものです。



さらには、数年前に発表された、STOP-NIDDM(同じくLancet誌に2002年に掲載:Acarbose for prevention of type 2 diabetes mellitus: the STOP-NIDDM randomised trial. Lance 359:2072, 2002.)という、アカルボースで行われた同様の試験成績もあります。ちなみに、ボグリボース・アカルボースともに、α-グルコシダーゼ阻害剤という同じ作用機序のお薬で、消化管からの炭水化物の消化・吸収を遅延させる働きをします。そのような作用機序であるため、基本的には低血糖も誘発しません。


以前のエントリーd:id:bonbokorin:20090723に書きましたように、前糖尿病状態の数年間に間に、どのような手を打てるか?というのはとても大事なわけですが、お薬という手段も選択肢として出来た、というのはとても有意義なことと思います。


もっとも、「発症抑制」という考え方ですが、それが健康保険適応範囲の基本概念である、「治療に限定」「予防投薬は認めない」というこれまでの考え方に抵触することはないのか、少し気にはなります。例えばインフルエンザに対するタミフルの予防投与は(効果は立証されているものの)保険適応外となっています。その辺りの考え方も今後、多少は変化していくことになるのか、そういった視点からも注目されます。


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