モーニングバランス(血糖上昇を抑えるトクホの食パン)、山崎製パンより新発売
山崎製パンが血糖上昇を抑えるトクホの食パンとして開発した「モーニングバランス」という新商品が4月1日より発売になるそうです。日経産業新聞の記事を引用します。
山崎製パンは特定保健用食品(特保)の食パン「モーニングバランス」を4月1日に発売すると発表した。体内で消化されにくい炭水化物を含み、食後の血糖値の上昇幅を抑える効果が期待できるという。1斤の希望小売価格は315円で、同社の通常商品より約4割高い。主食のパンで特保は珍しい。
タピオカデンプン由来の炭水化物、難消化性再結晶アミロースを1枚(70グラム)あたり3グラム含む。小腸で吸収されにくいため食後の血糖値上昇をおだやかにするとして、厚生労働省から特保の表示許可を受けた。
さらに詳しい資料(食品安全委員会新開発食品専門調査会発行)がこちらにありました。有効性についての検証実験の1つについて下記のように記しています。
予備試験時において空腹時血糖値(FBG)100〜140mg/dl を呈した、未治療の境界型糖尿病者12名及び健常成人8名を対象として、本食品2枚及びプラセボ(市販品相当の食パン2枚)を用いた二重盲検単回摂取クロスオーバー試験法による試験が実施された。各摂取期前の被験者のFBG は、本食品摂取期では110.0±9.7mg/dl、プラセボ摂取期では109.3±7.9mg/dl であった。
FBG 111mg/dl 以上の被験者では、本食品摂取後の血糖及びインスリンはプラセボ摂取後と比較して有意に低値を示した。FBG 110mg/dl 以下の被験者では有意な差は認められなかった。
この内容はEffect of Bread Containing Resistant Starch on Postprandial Blood Glucose Levels in Humans. Biosci.Biotechnol.Biochem.2005;69:559-566.として論文発表されています。
食品安全委員会新開発食品専門調査会の資料では「未治療の境界型糖尿病者12名及び健常成人8名」と書かれていて、境界型糖尿病者12名→有効、健常成人8名→差なし、と読めますが、この元論文をよく見てみますと・・
Adult men and women with untreated borderline diabetes mellitus, who showed a fasting blood glucose level between 100 and 140mg/dl in the preliminary examination, were selected from those registered to the untreated subject data bank at Soiken.
つまり、被験者は全員、境界型耐糖能異常者を集めています。そして、この全員の結果は下図のように「血糖値は有意差なし」でした。
ただ、空腹時血糖が111mg/dl以上の人たち12名に着目した場合には有意差があった、という内容になっています(下図参照)。
残りの8名が健常者ではなかったらしいことは、370kcalのパンを食べた食後1時間値が180mg/dl前後、2時間値が140mg/dl近かったことからも窺われます。つまり8名もやはり境界型耐糖能異常者であり、12名と8名に分けた処理はあまり正当性がなく、有意差を作り出すために後付けで行われた恣意的な処理である可能性があるわけです。本来であればさらに被検者を増やすことで有意差の検証をすべきだったように思われます。
新発売、ということでちょっと期待しましたが、どうやらデータを冷静に見ると残念ながらあまり期待すべきものではなさそうです・・