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リプログラミングによるマウスβ細胞再生-nature論文

Science誌の今年の10大ブレークスルーの第1位に輝いた「リプログラミング」。これは、生命科学基礎医学研究のみならず医療への応用にも今後大いに期待のできる、まさにイノベーションと呼ぶにふさわしいもので、まさしくブレークスルーでした。どのくらい画期的でインパクトがあるものか、まずは今年10月にnatureに発表された、リプログラミングによるマウスβ細胞再生の論文(In vivo reprogramming of adult pancreatic exocrine cells to β-cells.)の図表をご覧ください。



赤く染まっているのがインスリン産生細胞(β細胞)で、左はランゲルハンス島とよばれる内分泌細胞の集まりのところだけが赤くなっていますが、これが通常の状態です(つまり、β細胞はランゲルハンス島内にのみ、存在します)。ところが、ここに、アデノウイルスを用いて3つの転写因子の遺伝子(Ngn3 + Pdx1 + MafA) を注入しますと、右の図のように、元々外分泌腺細胞(膵液産生細胞)だったところに赤く染まるインスリン産生細胞が生じてきています。つまり、アデノウイルスにより持ち込まれた3つの遺伝子の働きにより、外分泌腺細胞の分化状態がリプログラミングされ、β細胞に再分化したということです。アデノウイルスはゲノムに挿入されることはなく、遺伝子の発現は一時的なものですので、リプログラミングによってエピジェネティックな変化が生じた、ということを意味しています。

論文を詳しく読むと、3つの遺伝子の選び方の基本的な考え方など、iPS細胞を作ってみせた山中論文(Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell 126:663-676, 2006)の手法とほとんど同じと言ってもよいものであり、iPS細胞の仕事の応用と言ってもよいくらいです。もちろん、ES細胞という大元まで遡らない形でもリプログラミングはできる(しかも、むしろその方が医療応用にも近いわけです)、という点を実証したことはまさに本論文の「価値」であり、今後も同様の応用例が次々と発表されるような予感がします。


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