特定健診日記

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日本分子生物学会年会(BMB2008)に行ってきました

神戸で開かれていた日本分子生物学会年会(BMB2008)に行ってきました。分子生物学会年会は毎年、はっきりと「進歩」を感じ取れる貴重な学会ですが、今年の大きな「進歩」のひとつとして、epigeneticsの情報が飛躍的に増えてました。次世代シークエンサーなるもの(1日に1億塩基対!読めるそうです)が実働を始め、ChIP-sequencing(クロマチン免疫沈降で集めたDNAを片っ端から読んでゲノム上の位置を同定していく手法)やsmall RNAのシークエンス解析などがどんどん進んでいるようです。来年の年会では、iPS細胞で大ブレークしたreprogrammingについてのepigeneticsのデータなど、さらに熱い話題が出てくるのでは、と今から楽しみです。

しかし、epigeneticsが進歩したと言っても、ヒストンのメチル化やアセチル化の修飾がどの部位にどのように入るのかという肝心の部分、つまり、「geneticsとepigeneticsをつなぐ部分」という「核心」については、まだまだ未知という印象でした。epigenetic controlにおいてDNA配列を読み取っている「本体」がDNA自身なのかタンパク質なのか、はたまたRNAなのか、そこが解明される日もやがてやってくるのでしょうけれど、まだまだ熱い研究展開があるに違いありません。

それと、GeneChipで有名なAffymetrix社がExon Arrayというさらに進化したトランスクリプトーム解析手法を宣伝してました。ヒトの遺伝子数は約2万5千と言われていますが、実際に存在するタンパク質の種類は約50万種と言われていて、alternative splicingやalternative promoterによって1つの遺伝子からいくつものバリアントタンパクが作られていることがしばしばあるわけですが、それらを把握するために、すべての遺伝子を網羅するだけではなく、すべての遺伝子のすべてのエクソンを網羅するGeneChipを開発したとのことです。これでトランスクリプトーム解析を行うとプロテオーム解析の結果と極めて高い相関性が出てくる、とのことで、手法的に煩雑でハードルの高かったプロテオーム解析から、より簡便な、エクソンアレイでのトランスクリプトーム解析での研究の時代に進み、またひとつ、いろいろな分野の研究が加速される要因になるように思いました。
マスコミ報道などを見ていますと、世の中は不景気一色のように感じてしまいますが、分子生物学会は7000題くらいの演題が例年同様、発表されていて、会場は(毎年そうですが)今年も熱気に溢れていました。「サイエンスこそは最高のエンターテインメント」でもあると個人的には思っているのですが、もっともっと多くの人々にライフサイエンスの面白さを知ってもらいたいと感じました。


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