特定健診日記

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「健康的な肥満」の見分け方 - 「肥満度」よりも「肥満余力」が大事

前エントリーで「メタボ」の知名度はほぼ100%とお伝えしましたが、その一方で「肥満=メタボ」という誤解は相変わらず多い気がします。男性で腹囲が85cmを超えても即メタボではないわけで、外見上太っているように見えても全く健康な人たちは当然のことながらたくさんいます。

このような「健康的な肥満」の見分け方について最近改めて注目が高まっているようで、いろいろな研究が報告されてきていますが、そのような中の1つで昨年Archives of Internal Medicine誌(168:1609-1616, 2008)に掲載された論文をご紹介しておきたいと思います。

この数年、プロトンMRS法(1H-magnetic resonance spectroscopy法)を用いたヒト組織内脂肪含量の測定技術が確立され、研究応用が進んできましたが、今回の研究では、metabolically healthyな肥満(BMI30以上)の人の特徴をプロトンMRS法で調べています。その結果、皮下脂肪量(下図C)・内臓脂肪量(同D)・骨格筋脂肪量(E)・肝脂肪量(F)の中で、肝脂肪量がもっともわかりやすい指標であったと結論しています(IS:インスリン感受性の健康的肥満、IR:インスリン抵抗性の病的肥満)。



注目すべきは内臓脂肪よりも肝脂肪に強固な関連が認められたということですが、脂肪が身体に貯められていく過程で、皮下脂肪→内臓脂肪→肝脂肪の順に入っていく、とイメージするとわかりやすいです。脂肪を車、組織を駐車場に例えると、皮下脂肪が第1駐車場、内臓脂肪が第2駐車場、肝臓が第3駐車場、という形になっていて、皮下脂肪が満杯になると内臓脂肪へ、そこも一杯になると肝臓へ、という具合に順次回っていく、というイメージです。そういう形で脂肪が増えていくにつれ、貯めるべき場所が減っていき、ついには血中に溢れ出て糖尿病や高脂血症となっていくのですが、その「貯めるべき場所の余裕」を「肥満余力」と言います。つまり「肥満余力」を失った肥満こそは要注意、逆に「肥満余力」がまだある肥満は問題なし、ということです。



このように、本質的には「どのくらい太っているか」よりも「あとどのくらい太れるか」が大事なわけで、それを「肥満余力」という概念を用いて考えるとわかりやすい、ということです。


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