特定健診日記

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見えないところでさらに医療崩壊を加速させている2大悪制度

医療崩壊という言葉がすっかりポピュラーになってきましたが、まだまだ「うちの近くのあそこは大丈夫だろう」と思われている方々も多いと思います。しかし、破綻こそしなくても、医療の質の低下・劣化は実は見えないところでもじわじわと進みつつあって、そして、これからも進んでいきそうです。

診療報酬の引き下げや、医師不足が原因となって病院が破綻したり、診療科がなくなったりすることを一般に「医療崩壊」と言っているわけですが、これはまだ目に見える形で起きていることなので、大変なことではあるものの、まだ目に見えている分、ましとも言えます。目に見えないところで潜在的に進みつつある、もうひとつの医療崩壊とは、ずばり、若手医師の質の低下です。

このことはまだあまり公に語られていないと思うのですが、現実に始まっていることをいろいろなところで実感しつつあります。成長過程にある彼ら・彼女らのことですから、いろいろなことがあって当然ですが、しかし、そういうレベルを超えて、若手医師の質の低下が進んでいるという現実を直視しておかねばなりません。そして、その背景に、見過ごすことのできない医療制度・教育制度の「改悪」があるのだということも、はっきり指摘しておきたいと思います。

その「改悪」とは、1つは研修制度改革、もう1つはDPC制度への移行です。研修制度改革は、大学病院への研修医の集中を排除することと、専門だけでなく全科の素養を研修医に身につけさせることを意図して、平成16年度から始まりました。しかし結果的に、何が起きているかというと、研修医が始終、いろいろな科を動くために本腰を入れて主体的に医療に取り組む機会が逆に減ってしまい、各病院の各科で「お客さん」扱い、もっとはっきり言えば「学生さんと同レベル扱い」になってしまい、医師として必要な経験を積むべき大事な時期に以前よりずっと低レベルの研修しかできなくなってしまっています。そして、これが結果的に、「マイナー科志向」と呼ばれる、内科・外科などのメジャー科志望者を減らすことにもつながっています。

もうひとつの大悪制度改革は、大病院を中心に平成15年から始まったDPC制度です。DPC病院では、あらかじめ決まった診断名の下に決まったメニューの医療を提供することが原則となってしまいました。本来は、入院中にいろいろ調べたら別の病気が見つかったりすることも、少なくないわけですが、DPC病院ではそうしたことを極力控えるように運営され、研修医の教育もそうした方針の下に行われます。つまり、病気を見つけたり、診断のついてない病気を診断するトレーニングという若手医師にとって非常に大事な研修をDPC病院ではほとんど受けることができないのです。こうして、「DPC脳」を埋め込まれた「マニュアルくん」たちが大量に作られつつあります。診断における「思考停止」を推奨する「脳内DPC化」は、某国のかつての文化大革命にも匹敵する、とんでもない「革命」なのです。

こうして平成15-16年頃から始まった医療制度・研修制度の「大改悪」のために、医師としてのスタートの大事な時期を不幸な形で過ごすことになってしまった若手医師たちが増えつつあり、今のところ、そうした制度を方向転換しようという機運さえないのが現状です。あとさらに数年して、彼ら・彼女らが医療現場の中心となった頃に、この問題は大きな問題として顕在化し、そしてまた次の世代をも同様な形に再生産してしまうことでしょう。

一刻も早く手を打って、これらの制度「改悪」を「改革」する必要があります。そうでないと本当に、将来、取り返しのつかないことになってしまいます。


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